EV・LNG・HVOで変わる配送コスト 軽貨物業界に訪れる人材不足解消の兆し

- 2025.09.23配送コラム
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EV・LNG・HVOで変わる配送コスト 軽貨物業界に訪れる人材不足解消の兆し
自動運転の前に、EV・新エネルギー・低燃費化で「配送コスト」を下げる――。下がったコストをドライバーの報酬へ再配分すれば、人材不足のボトルネックに光が差します。
本稿は、横浜・東京で軽貨物の起業や配送依頼、人材育成に取り組む方へ向けた、ハウンドジャパンの実務目線コラムです。
1.要旨|「エネルギー先行投資」で採用と利益を両立
ラストワンマイルはサプライチェーンで最もコスト感応度が高い工程。エネルギー費(燃料・電力)を下げる→配車と運転挙動を最適化→浮いた原資をドライバーへ還元、という循環をつくることが、横浜・東京の軽貨物においても労務・品質の両面で最短距離です。
2.外部環境|電池コストの下落と商用BEVの現実解
- バッテリー価格の下落で商用バンのTCOが改善。夜間充電の活用で電力単価を抑えれば、都市内・近距離配送はBEVの先行メリットが出やすい領域です。
- 次世代電池(ナトリウムイオン、全固体等)やBaaSの台頭で、導入タイミングの選択肢が増加。段階導入+TCOモニタリングが実務的です。
3.低燃費で良くなる〈運送業の項目〉チェックリスト
A.都心近距離はBEVバンの優先導入
拠点間・定点往復では夜間充電×予見可能なルートで稼働率を確保。電費最適化(速度域・空調・積載)と合わせて、電力単価の安い時間帯を狙い撃ち。
B.長距離はLNG/バイオLNG・HVOで現実解
電化しづらい重量・長距離は、LNG・バイオLNGや再生可能ディーゼル(HVO)で燃料コストとCO₂を同時に抑制。既存車の活用余命も延びます。
C.タイヤ&空力&整備で“今すぐ3~10%”
- 低転がり抵抗タイヤ(LRR):燃費が約3%+改善。空気圧の常時監視とセットで。
- 空力デバイス:サイドスカート等の組合せで5~10%改善も。
- 定期整備の徹底:アライメント・ハブ・ブレーキ引きずりは要監視。
D.運転行動×テレマティクスで“行動変容”
加減速・速度超過・アイドリングを可視化し、ドライバー教育を月次の“習慣”に。平均8~10%の燃費改善は実証豊富。
E.配送設計の再定義(結合率を上げる)
同日内結合/時間幅の柔軟化/置き配合意で、総走行距離と失敗配達を同時に削減。「速さだけ」から「最適化」へ。
4.コスト→人材へ|“数式”で見えるメリット
年間走行100万km・実勢燃費6.5km/L・軽油170円/Lなら、燃料費は概算約2.6億円/年。
上記A~Eの合算効果を10%とすると約2,600万円/年を削減。その半分をドライバー報酬と休息・教育投資にリターンすれば、採用力と定着率が同時に上がります。
5.中期視点|サプライチェーンと次世代電池の潮目
電池の内製・循環設計・代替化学系が進み、価格の下振れ余地が拡大。横浜・東京の軽貨物でも、段階導入+更新サイクル短縮が合理的です。
6.ハウンドジャパン式ロードマップ(実装たたき台)
① 現況可視化 車両別の電費/燃費・アイドリング・空転時間を取得(テレマティクス)。 ② クイックウィン LRRタイヤ/空力/空気圧管理、速度上限制御、アイドリング規律。 ③ 車両ポートフォリオ 都市近距離=BEV、幹線=LNG/バイオLNG・HVOで路線別最適化。 ④ 配送設計 同日内結合・置き配・時間帯の柔軟化で走行距離を圧縮。 ⑤ 再投資ルール 削減分50%をドライバー報酬・教育、50%を次の省エネ投資へ。 7.まとめ|横浜・東京の軽貨物は“エネルギー先行”で勝ちにいく
自動運転を“待つ”のではなく、EV・新エネルギー・低燃費化を起点に、配送コストを下げて待遇改善と品質向上を同時に実現。起業・配送依頼・人材育成の各ステージで成果に直結します。
参考・出典(主要)
- MIT Sloan「ラストマイルは総コストの最大要因(~53%)」:MIT Sloan Management Review
- IEA「Global EV Outlook 2024」(普及見通し):IEA
- BloombergNEF「2024年の電池価格▲20%(115$/kWh)」:BloombergNEF
- TEPCO「燃料費調整と割引の時限措置」:東京電力(英語版PDF:2025/08)/仕組み資料:東京電力(英語版PDF:2024/12)
- 九電「燃料費調整の仕組み(例示)」:Kyushu Electric(統合報告書 2023)
- Frost & Sullivan「EV産業のトップ10戦略的イシュー(次世代電池・BaaS等)」:frost.com
- EPA/SmartWay「LRRタイヤ」:US EPA/NACFE「トレーラー空力」:NACFE
- ドライバー行動・アイドリング削減の実証:ROSA P(米運輸省NTL)/補足:US EPA(アイドリング削減技術)/参考:ACEA
- LNG/バイオLNG、HVOの国内外動向:Reuters(電池価格動向の背景)/Reuters(中国のディーゼル需要とLNGトラック)/IEA-AMF(HVO基礎情報)
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